移住は大人にとって大変なことですが、実は子どもにとっても一大事です。
大人が日々の準備や仕事に追われているあいだに、子どもは密かに悩みを抱えていることがあります。
冬に差し掛かるある日、息子がぽつりと言いました。
「友だちと同じ小学校に行きたい」
その一言に、胸がぎゅっと締めつけられました。
この記事では、移住を控える中で子どもが見せた不安と、親としてどう寄り添い、どう行動したのか…私自身の体験をお話しします。
移住準備の裏で、子どもが抱えていた不安

移住の準備で忙殺される毎日。
自分の気持ちを振り返る余裕もない中で、息子が言った短い言葉が胸に刺さりました。
「友だちと同じ小学校に行きたい」
覚悟はしていたはずなのに、実際にその言葉を聞くと息が詰まりました。
うつむいて今にも泣きだしそうな息子の姿。
小さな体で抱えていた不安に、親の私がどう向き合えばいいのか…手探りの日々の始まりでした。
移住を決めてからの1年間は、本当に忙しい毎日。
いつもの子育てや家事に加え、移住のためのイレギュラーな準備が山のようにありました。
子どもには「おじいちゃんおばあちゃんの住んでいる町に引っ越すよ」と伝えてはいたものの、まだ幼くて実感はしていないだろうと思っていたのです。
けれど秋から冬に変わるある日、幼稚園の帰り道で息子がぽつりとつぶやいたその言葉に、胸が締めつけられました。
友だちと一緒に小学校へ行けないことを、ちゃんと理解していたんだ。
幼いながらもその現実を受け止めようとし、心の中で静かに苦しんでいたことが伝わってきました。
親としてできることは何だろう?
悩んでいる子どもに向き合うとき、一番大事なのは「子ども目線で考えること」。
そう考えた私は、次の3つを意識して行動しました。
子どもの気持ちを受け止める

「友だちと離れるのが悲しい。つらい。さみしい。」
そんな気持ちをまずは受け止めることにしました。
幼稚園の友だちといるのが楽しいんだね。
だから、離れるのは寂しいよね。
同じ小学校に行きたいんだね。
子どもの表情から伝わる感情を、ゆっくり一つずつ言葉にして返していきました。
前向きな未来を伝える
情報がないと、人は不安になります。
子どもも同じ。
だから、私が知っている情報をできるだけ明るく話しました。
おじいちゃん、おばあちゃんと毎日会えるよ。
お父さんが通った小学校に通えるよ。
木でできた校舎できれいだったよ。
お母さんも通ってみたいと思ったよ。
お母さんは小学校で友だちができたよ。
小学校で友だちができるから大丈夫だよ。
一つひとつ、笑顔で、ゆっくり伝えました。
抱きしめて安心させる
言葉を重ねたあと、最後には子どもを抱きしめました。
子どもを抱きしめて背中をポンポンしていたら、少しずつ安心した表情になっていくのがわかりました。
本当は親の私もつらかった

ここまで「子どもにどう向き合ったか」を書きましたが、実際には私自身も心の中ではつらかったのです。
友だちや地元から離れる寂しさは、私だって同じ。
むしろ何十年も生きてきた土地を離れるわたしの方が、抱えている寂しさは大きかったと思います。
でも、子どもの前では不安を隠し、ちょっと困ったような笑顔で受け止めました。
正直、演技に近い部分もありました。
それでも、あのときの私にできる最善は「子どもの不安を少しでも軽くすること」だったと思います。
数年後、子どもがくれた言葉
あれから数年が経ち、小学4年生になった息子が、ある日、こんなことを言ってくれました。
「小学校で友だちができるか心配だったけど、ちゃんとできたね」
その言葉を聞いて、ようやく心から「大丈夫なんだ」と思えました。
まとめ
子どもが「友だちと離れるのがつらい」と言うとき、親としても胸が痛みます。
でも、受け止めて、前向きな未来を一緒に描いてあげれば、子どもは少しずつ新しい環境に適応していきます。
そしてその過程で、親自身も成長していけるのだと思います。
もし今まさに不安の渦中にいる方がいたら、伝えたいです。
「きっと大丈夫」
子どもは必ず、新しいところで自分の居場所を見つけていきます。



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