『いつになったら、移住先に慣れることができるんだろう』
ずっと心のどこかに焦る気持ちがありました。
でもある時、周りの景色に対する感覚の変化に気づいたんです。
慣れ親しんだはずのビルが立ち並ぶ景色より、緑が多く低い建物ばかりの広々とした景色に安心感を覚えるようになっていました。
淡々と暮らし続けることで、いつの間にか今いる場所に慣れていたんですね。
今回はそんな気づきについて、お話しします。
縦の町から横の町へ
移住したばかりの頃、周りの景色にすごく違和感を感じていました。
低い建物ばかりで、田んぼや畑があちこちにあって、ばーっと横に景色が広がっている…何だか空間がスカスカしているな、と思っていました。
前に住んでいたのは「縦の町」

前に住んでいた所は、ビルが多く立ち並び、辺りを見渡すとぎゅっと建物が密集していました。
生活で利用する場所も、ほとんどが5階以上のビルでした。
・職場は4階
・子どもの習い事は6階
・行きつけのショッピングセンターは5階建て。買うものに合わせて階を移動
どこに行っても上の階に上がったり下の階に降りたり…と、縦移動でした。
そして目的地への移動は、小回りが利く自転車か数分おきに来るバスが基本でした。
いつでも歩道には人がたくさん歩いていて、どこにいても人の気配がしていました。
移住したのは「横の町」

一方、移住した先の町は、縦移動はほとんどが2階まで。
3階もたまにありますが、5階や6階に行く機会はほぼありません。
よく行くスーパーもショッピングモールも、2階建てです。
町を見渡すと、ビルはありますが、乱立している感じではなく、ぽつぽつと建っているという感じ。
全体的に低い建物が多く、あちこちに田んぼや畑があって、横長の広い空間が広がっています。
その広い空間を移動するには、自家用車が基本。
バスは1日に数本走っている程度で、自転車も通勤・通学時間帯に見かけるくらいです。
そして、外に人がいない。
歩いていて、ほとんど人とすれ違わないのです。
夕方や朝は歩いている人を見かけますが、昼間は珍しいと感じるくらいです。
乱立する建物や雑踏に慣れ親しんでいたわたしは、広く空間に余裕があり、人がいないのが頼りなく感じて、最初は怖く感じていました。
変わった自分の感覚

でも、暮らしていくうちに、目が慣れ、雰囲気にも慣れていきました。
そして、スカスカだと感じていた広い空間に、深呼吸ができる余白のような安心感を持つようになりました。
昨年、久しぶりに前に住んでいたエリアに行ったのですが、エスカレーターを乗り継いでの移動や、人の多さにひどく疲れてしまって。
「これが以前は日常だったのか~」と改めて驚いてしまいました。
ぎゅっと密度が詰まった空間に、少し息苦しさを感じるようになっていたんです。
このことは、わたしにとって不思議な変化でした。
『いつの間に、このように変わったのかしら?』
今いる場所で毎日見ているものや、日々おこなっている行動によって、いつの間にか自分の当たり前が塗り替えられていました。
毎日の生活は、静かに大きな変化を、わたしに与えていたんです。
まとめ
移住したての頃、「早く慣れなきゃ」と焦るような気持ちになることが、よくありました。
でも、そこで淡々と生活するだけで、人って変わる。
あの頃の自分に今伝えたいのは、
「大丈夫。ゆっくりでいいよ。自然に変わっていくから」
という言葉です。



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